世界幸福度2位のデンマークから学ぶ心と身体の健康

世界幸福度2位のデンマークから学ぶ心と身体の健康

〜社会システムと幸福感の関係〜

世界幸福度ランキング2位のデンマーク。人の身体と心の健康に携わる仕事をしてきた私は、「幸せを感じて生きる」ことの本質が気になっていました。特に北欧の厳しい気候の中でデンマーク人がどのように幸せを実感しているのか—その答えを求めて私の旅は始まりました。

「幸せな社会」への興味

2024年6月末、私は北米からヨーロッパへ入国し、長期滞在をするためにワーキングホリデーの可能性を探していました。多くの国では日本からの申請が必要でしたが、調査を進めるうちデンマークでビザ取得が可能と知り、この国への滞在を決意しました。

医療現場で働く中で、「治療」だけでなく「予防」や「生活の質」の重要性を痛感していた私は、手厚い教育福祉とワークライフバランスが充実したデンマークで、人々がどのような価値観で生きているのか強く興味を持ちました。

結果的には観光ビザ90日での滞在期間中、7月下旬に10日、8月上旬に3日間、ワーキングホリデービザ取得後9月12日-10月24日の約2か月間という短い期間になりましたが、旅するセラピストの視点から感じたデンマークの「幸せの秘密」を綴ります。

健康を支える社会システム

デンマークは九州程の大きさで人口は約600万人。福岡県の人口が500万人程度なので、小さな規模の国です。

デンマークと九州の比較

税率は高いですが、学費や医療費がすべて無料の福祉国家であることは、身体的・精神的健康の基盤として非常に重要だと感じました。

日本で患者さんの経済的負担を気にしながらケアを考えてきた経験と比較すると、「治療を受ける権利」が社会システムとして保障されているデンマークでは、人々が健康に対する不安から解放されている印象を受けました。住所登録の時点でかかりつけ医が自動的に決定されるため、医師を調べたりする必要がないが評判などがあるかもしれないのでそこの点は一長一短かもしれないです。実際に治療を受けた経験がないため、予約してから診療までの時間は不明です。

教育から見る身体と心の調和

デンマークの教育において印象的だったのは、中学1年生くらいまでは成績をつけず、「人間性を育む」ことを重視している点です。Workawayを通じて10日間滞在した家族の両親はこの価値観を大切にしていました。

ホストの娘の誕生日デコレーション

小学校の体育の授業を見学した際、子どもたちは好きな運動着で楽しそうに球技をしていました。日本では背の順で整列し、身長で比較され、体育専用の服で個性を抑え、競争が重視されます。デンマークの教育が「楽しく体を動かす」という本来あるべき身体活動の喜びを大切にしていることに感銘を受けました。

健康的な心と身体は競争ではなく、自己肯定感と楽しさから育まれるのではないでしょうか。

肯定的な社会風土と心の健康

驚いたことに、デンマーク人で自らネガティブな発言をする人にほとんど会いませんでした。例えば私が「これしかできなかった…」と言うと、「大丈夫だよ。よくやっているよ!」と肯定的な返答がありました。

自分を責める歪んだ思考をセルフラブの考え方によって塗り替える事をしてきた私にとって、改めて重要性を感じました。日常の中で、自分や他者の小さな進歩をどのように認め、言葉にしてみましょう。

充実した福祉制度と「安心」の効果

電動車椅子を使用し毎日介護が必要な方がAirbnbのホストをされていました。介護状態になっても政府から保障があることで、その方は安心して暮らし、さらに海外での支援活動も行っていました。

Airbnb オーナーの支援事業

多くの障がいのある方と関わってきた私は、「介護が必要になったらどうなるか」という不安が健康に与える影響の大きさを知っています。デンマークでは社会的セーフティネットがしっかりしているため、この不安から解放され、より自分らしい生活を送ることができるのだと感じました。

また、退職後にボランティア活動に邁進している方に理由を尋ねたところ、「私達の富と幸福は、ただ生き残るため、あるいは子供たちを生き残らせるために奮闘するのではなく、他人を助けるための時間とエネルギーを与えてくれる」という素晴らしい返答がありました。

「誰かの役に立つ」という経験は自己肯定感を高め、心身の健康に大きく寄与します。社会保障が整っているからこそ、他者への貢献に目を向けられる余裕が生まれるのかもしれません。

デジタル先進国に見る「ストレス軽減」

世界で最もデジタル化が進んだ国であるデンマークでは、CPRナンバーと紐づいたカードで各種手続きがスムーズに行え、400年続いた手紙配達も今年中に廃止される方向です。

日本での経験と比較すると、図書館ごとに異なるカード、銀行での手書き書類、郵便物の確認など、私たちは日常的に多くの「小さなストレス」に晒されていることに気づきます。日々の臨床で感じてきたことですが、このような「小さなストレス」の積み重ねが身体的緊張や疲労につながることは明らかです。

デンマークのシステムは、これらの「小さなストレス」を減らすことで、人々が本当に大切なことに集中できる環境を作り出しているのではないでしょうか。

幸せと健康の基盤を考える

たった2か月のデンマーク滞在でしたが、「幸せを感じられる社会」の基盤には、教育、福祉、デジタル化などのシステムが重要な役割を果たしていることを実感しました。

これまでのキャリアから言えることは、身体の健康は心の健康と切り離せないということ。そして心の健康は社会システムによって大きく影響を受けます。デンマークで見た「幸せの秘密」は、個人の努力だけでなく、社会全体で健康と幸福を支える仕組みにあるのかもしれません。

次回は「デンマークの各都市で感じた暮らしと健康 —旅するセラピストの視点から」と題して、訪れた都市の特徴や、デンマークが抱える課題(日照不足と精神健康など)について、心と身体の健康という観点から掘り下げていきます。

あなたの日常にも、小さな「幸せと健康の仕組み」を取り入れてみませんか?


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