〜北欧の幸福と課題〜
前回の記事では、デンマークの社会システムが人々の幸福感にどう影響しているかをお伝えしました。
今回はデンマークの各都市の特徴や、北欧の暮らしが抱える健康課題について綴ります。
自転車の都市
特に注目したのは、街中を行き交う自転車の多さです。坂道など起伏の差がないため、老若男女問わず日常的に自転車を使用しています。公共交通機関の費用が高い⇧街の設計自体が歩行者や自転車に優しく、体を動かすことが特別なことではなく日常に組み込まれていることが、健康維持に大きく貢献していると感じました。

大都市コペンハーゲン
デンマークの首都コペンハーゲンは国際色豊かな都市で、「コペンハーゲンがデンマークの全て」と言う人もいれば、「コペンハーゲンはもはやデンマークじゃない」と言う人もいるほど独特の雰囲気を持っています。

「世界一幸せな都市」アーフスでの長期滞在
第二の都市Århusアーフスで私は長期間過ごしました。「World happiest city」「Smile City Aarhus」と呼ばれるこの街は、街中に沢山のアートがあり、創造性を刺激する雰囲気に満ちていました。

長期滞在し、地域の人と関わろうとしたため気付いた事があります。街の狭い範囲で公民館のような施設が多くあり、その中にはカフェが併設されて、小さなイベント(編み物・料理・運動等)様々なものが開かれ、どの施設にも多種多様な主催者がイベントポスターを貼り、ネットからもその一覧をわかりやすく探すことができました。
勿論地元新潟にも公民館はあり、イベントが開催されることはありましたが、公的な催しでないとポスター貼っていけないといわれ、オンラインや内輪でしか広められない難点があります。
また、音楽ホールで時折無料の音楽イベントが開かれ、ピアノ科や声楽科の生徒が舞台を踏むために無料で開催しているそうです。ワインやスナックもサービスで出され、素敵な音楽を楽しむことが出来る機会は魅力的でした。
心の健康と社会的つながりは密接な関係にあります。あなたの住む街でも人々が自然と集まり、交流できる場所を探してみると良いかもしれません。
童話の街オーデンセと心の癒し
第三の都市Odenseオーデンセは、『人魚姫』『裸の王様』『親指姫』といったアンデルセン童話の作家、ハンス・クリスチャン・アンデルセンの出身地です。

私はアンデルセン童話の事を読んだことがあるか定かではないですが、日常に「物語」や「非日常」を取り入れることが、現実世界と少し離れ心身の緊張緩和につながるのではないでしょうか。
デンマークの自然と健康課題
最四の都市Alborgにも訪れました。

Alborg滞在中はカウチサーフィン(ホストと旅行者のマッチングのようなサイト)のホストにお世話になり、ハイキング(ウォーキング)に行きました。しかし、この場所は標高わずか100m。デンマークは世界で2番目に平坦な国なのだそうです。

そこからバスで1時間半かけてThyという海と自然が一体化した国立公園がある場所にも訪れ、平野・海と自然が一体化した美しい景観に出会いました。自然環境に癒される私にとって、この経験は貴重なものでした。

このような自然環境から、地元の友人が皮肉をこめて「パンケーキカントリー」と呼ぶ程平坦な国で、デンマークを出国した後訪れた世界一平坦な国オランダと比較しても水源が限られれた印象でした。日本のような変化に富んだ地形や温泉などの自然資源が少ないことは、身体活動の多様性や自然療法の面では一つの制約かもしれません。
また、1年を通じて太陽が出る日が少なく、特に冬場の日照不足が深刻です。実際、抗うつ薬の製造会社があるほど精神疾患に罹る人も多いのが現実です。日照不足がセロトニンやビタミンD生成に影響を与え、精神健康や骨の健康に関わることは見逃せない事実です。
デンマークの人々はこの課題を補うため、家でのDIYや編み物など創造的な活動を楽しむ傾向がありました。これは「アクティブレスト(積極的な休息)」の一形態として、心身の健康維持に役立っていると感じました。
デンマーク滞在時はカウチサーフィンを利用し、独身50代以上の男性の家に数回お世話になりました。この年代だと仕事をする必要がないのと独身でも満足できる社会制度で離婚率が50%もあるというデータもあります(良いのか悪いのか)
「幸せ」のバランスを考える
デンマーク滞在を通じて、「幸せ」とは社会システム、身体活動、社会的つながり、創造的活動など、様々な要素のバランスの上に成り立つものだと改めて実感しました。そして、国の「幸福度」も単一の要素ではなく、多面的な視点から考える必要があります。
デンマークでは福祉やデジタル化など優れた点がある一方で、気候による制約や地理的特徴による課題もあります。それでも全体として「幸せな国」と評価されるのは、様々な要素のバランスが取れているからでしょう。
旅するセラピストからのメッセージ
様々な悩みを抱えながらも旅に出た私が伝えたいのは、「自分の心と身体を整えることの大切さ」です。
デンマーク滞在は当初イメージしていたよりも短い期間でしたが、「幸せ」に対する考え方を見つめ直す貴重な機会となりました。生まれ育った環境が異なれば、同じ場所でも感じ方は違います。そして、どんなに情報を集めても、実際に五感で体験することで初めて見えてくるものがあります。
コンフォートゾーンから一歩外に出ることは、時に不安を伴いますが、心と身体は新しい刺激によって成長するということ。あなたも普段と違う景色の中で、自分の「幸せ」と「健康」について考えてみませんか?
きっとこれまでの日常では出会えなかった、自分自身の新たな可能性に気づくことができるでしょう。
追伸:日本人はワーキングホリデービザ申請費無料という先人が築いたデンマークとの友好関係に感謝です。